プレインズウォーカー年代記

ゼンディカーの原生、オムナスの軌跡:その形態変化とプレインズウォーカーとの関わり

Tags: オムナス, ゼンディカー, エレメンタル, ストーリー, 次元

はじめに

マジック:ザ・ギャザリングの多元宇宙には、様々な次元とそこに根ざす独特の生命が存在します。ゼンディカー次元における最も象徴的で、かつ神秘的な存在の一つが「オムナス」です。オムナスは単なるクリーチャーではなく、ゼンディカーの原生の力が具現化した存在であり、次元そのものの状態や危機と深く結びついてその形態を変化させてきました。この記事では、ゼンディカーの荒々しい性質を体現する存在として登場したオムナスが、エルドラージの覚醒、次元の回復、そしてファイレクシア侵攻を経てどのように変容し、その軌跡がゼンディカー、さらにはプレインズウォーカーたちの物語にどう影響を与えてきたのかを解説します。

ゼンディカーの原生としての起源

オムナスが最初にその姿を現したのは、『ワールドウェイク』セットにおいて、《大いなるガルガドン》(Great Gargadon)というカードのフレイバーテキストと関連性が示唆される形で登場した、《ゼンディカーの力、オムナス》(Omnath, Locus of Mana)というカードでした。この時のオムナスは緑単色のエレメンタルであり、ゼンディカーのマナの純粋な力、特にケラノス山脈の荒々しいエネルギーが凝縮された存在として描かれました。ゼンディカーという次元は、その地形が常に変動し、危険に満ちた冒険の舞台ですが、オムナスはその「怒れる大地」の側面を強く体現していました。この初期の形態は、ゼンディカーがエルドラージの脅威に晒される前の、次元固有の荒々しさと生命力の象徴とも言えます。

エルドラージの覚醒による変容

長きにわたりゼンディカーに封じられていた古の脅威、エルドラージが『エルドラージ覚醒』で解放されると、次元全体が歪められ、その生態系とマナの流れは大きく変質しました。この次元的な危機はオムナスにも影響を与え、その形態は大きく変化しました。続く『戦乱のゼンディカー』ブロックで登場した《荒廃の波、オムナス》(Omnath, Locus of Rage)は、赤と緑の二色を持つエレメンタルとなりました。これは、エルドラージによってゼンディカーのマナが汚染され、破壊的な「荒廃」の力が混じり合った結果と考えられます。怒りを体現する赤の要素が加わったオムナスは、次元を食らい尽くすエルドラージとその末裔に対して、ゼンディカー自身の怒りや抵抗の力を示しているようでした。

この時期、ゼンディカーを救おうとするプレインズウォーカー、特にゼンディカーと強い絆を持つニッサ・レヴェインは、荒廃した次元の原生の力と共鳴しようと試みます。ニッサはゼンディカーを「生きた存在」として感じ取り、その苦しみや怒りを共有しました。オムナスは、この苦しむ次元の象徴として、ニッサを含むプレインズウォーカーたちのエルドラージとの戦いにも関わっていきます。

次元回復期の新たな形態

エルドラージの脅威が退けられた後、ゼンディカーはゆっくりと回復の道を歩み始めます。この回復期におけるオムナスの姿を描いたのが、『ゼンディカーの夜明け』セットの《原初の潮流、オムナス》(Omnath, Locus of Creation)です。この形態では、オムナスは赤、緑、白、青の四色を持つエレメンタルへと進化しました。これは、ゼンディカーがエルドラージの汚染から解放され、本来持っていた多様な生命力や創造の力が再び目覚めたことを示唆しています。白は秩序や回復、青は流れや変化を表し、かつて荒々しい緑単色だった存在が、次元全体のエネルギーとより統合されたことを物語っています。この形態は、ゼンディカーが単なる危険な荒野ではなく、創造と生命力に満ちた世界であることを改めて示すものでした。

この時期、ゼンディカーはスカイクレイブと呼ばれる新たな脅威や、過去の出来事の遺産に直面しますが、オムナスは次元の回復と再生の力として、その安定化に貢献しているかのように描かれました。

ファイレクシア侵攻と最終形態

そして、多元宇宙全体を巻き込んだ新ファイレクシアによる侵攻、「機械兵団の進軍」がゼンディカーにも及びます。次元が再び存亡の危機に晒される中で、オムナスはさらなる変容を遂げ、『機械兵団の進軍』セットに《結ばれた力、オムナス》(Omnath, Locus of All)として登場しました。この形態では、オムナスは黒を含む全ての五色を持つエレメンタルとなりました。黒はしばしば死、腐敗、あるいは支配といった要素を象徴しますが、この五色化は単なるファイレクシアの侵食を示すだけでなく、ゼンディカーがファイレクシアの脅威に立ち向かうために次元全体のあらゆる力を結集していること、あるいは、次元自身が受けた傷や死すらもその一部として取り込もうとしている複雑な状況を反映している可能性があります。

ファイレクシアとの戦いにおいて、オムナスはゼンディカーのレジスタンスの最後の希望の一つとして描かれました。次元の原生の力が、その全容をもって侵略者に抵抗する姿勢を示したのです。

まとめ

オムナスの軌跡は、ゼンディカーという次元自身の物語と不可分に結びついています。初期の荒々しい原生の力から、エルドラージによる汚染、次元の回復、そしてファイレクシアの侵攻という歴史的出来事を通して、その姿と色は変化し続けてきました。この変容は、ゼンディカーが直面してきた危機と、それに対する次元自身の反応、そして生命力の回復力や抵抗の意志を象徴しています。オムナスは単なるクリーチャーではなく、ゼンディカーという次元の「心臓」あるいは「精神」のような存在として、プレインズウォーカーたちの冒険の背景に常に存在し、その運命に寄り添ってきたと言えるでしょう。オムナスの形態変化を追うことは、ゼンディカーという多様で複雑な次元の歴史を理解する上で、非常に興味深い手がかりとなります。