プレインズウォーカー年代記

ヤヤ・バラードの軌跡:氷河期と兄弟戦争を生き抜いた炎のプレインズウォーカー

Tags: ヤヤ・バラード, プレインズウォーカー, 氷河期, 兄弟戦争, 灯争大戦

はじめに

マジック:ザ・ギャザリングの多元宇宙には、遠い過去から現在まで数多くのプレインズウォーカーが登場します。中でも、大いなる修復以前の古のプレインズウォーカーは、現在のプレインズウォーカーとは異なる性質を持ち、途方もない年月を生きてきました。ヤヤ・バラードは、そのような古のプレインズウォーカーの一人であり、炎を操る並外れた魔道士です。彼女はドミナリアの歴史における重要な出来事、特に氷河期や兄弟戦争に深く関与してきました。この記事では、ヤヤ・バラードの波乱に満ちた軌跡を、時系列を追って詳細に解説します。

氷河期と黎明期の活動

ヤヤ・バラードがいつプレインズウォーカーの灯を点したのかは明確ではありませんが、彼女は少なくともドミナリアの氷河期(Ice Age)には既に古のプレインズウォーカーとして活動していました。氷河期はウルザとミシュラの兄弟戦争終結によって引き起こされた気候変動により、ドミナリアが極寒に閉ざされた時代です。ヤヤは炎を操る能力を駆使し、寒さに対抗するとともに、多元宇宙を旅していました。

この時代、ヤヤはドミナリア南部の地熱地帯であるキオーラに拠点を置いていました。彼女は「シークレット・ソサエティ・オブ・メイズ」と呼ばれる組織のメンバーであり、この組織は多元宇宙の秘密を探求し、特にウルザのファイレクシアに対する戦いに関連する知識を集めていたとされます。ヤヤは炎魔道士としての訓練を施すこともあり、一部の伝説的なクリーチャーや人物に影響を与えました。

兄弟戦争への関与とその後

氷河期が終わりを迎える頃、ヤヤはウルザとファイレクシアの千年戦争の最終局面、特に兄弟戦争(The Brothers' War)の時代の出来事にも深く関わっていました。彼女はウルザやテフェリーといった他の古のプレインズウォーカーたちと交流を持ち、ファイレクシアの脅威に対する共通の認識を持っていました。特に、2022年のセット『兄弟戦争』で語られた物語では、ヤヤは兄弟戦争当時のドミナリアに一時的に帰還し、若き日のウルザやミシュラ、そしてテフェリーと関わる姿が描かれました。

ヤヤはウルザとは反りが合わないことが多かったものの、ファイレクシアという共通の敵に対しては協力的な姿勢を示しました。彼女の炎の魔法は、機械的なファイレクシアの構造物や軍勢に対して有効な手段でした。この時代の活動を経て、ヤヤは古のプレインズウォーカーの中でも特に長命かつ強力な存在として知られるようになりました。

大いなる修復とプレインズウォーカーの性質の変化

大いなる修復(The Great Mending)は、多元宇宙全体の構造に大きな変化をもたらし、プレインズウォーカーの性質を根幹から変えました。修復以前の古のプレインズウォーカーはほぼ不死であり、その力の制御も現在のプレインズウォーカーとは比較にならないほど絶大でした。大いなる修復の後、プレインズウォーカーは有限の存在となり、その能力もより制限されることになりました。

ヤヤ・バラードは、この大いなる修復を生き延びた数少ない古のプレインズウォーカーの一人です。修復後も彼女はプレインズウォーカーとしての能力を維持しましたが、その性質は変化しました。しかし、彼女の炎を操る力とアンデッドや冷気に対する強い憎悪は変わらず、その後の多元宇宙での活動を続けていきました。

灯争大戦での活躍と犠牲

長い間、ヤヤ・バラードは表舞台から姿を消していましたが、ニコル・ボーラスによる灯争大戦(War of the Spark)において、再び重要な役割を担いました。ボーラスがプレインズウォーカーの灯を奪うための儀式を実行するために、ラヴニカ次元に多数のプレインズウォーカーが集結した際、ヤヤもその場に駆けつけました。

ラヴニカでの戦いにおいて、ヤヤは炎の魔法でファイレクシア化したアトラクサやその他多くのクリーチャーと戦いました。彼女は特にゲートウォッチの一員であるギデオン・ジュラと行動を共にすることが多く、彼の正義感と自己犠牲の精神に触れました。灯争大戦のクライマックスにおいて、ボーラスの計画を阻止するためには莫大な魔力が必要となり、ヤヤは自身の持てる力の全てを解放し、ラヴニカのギルドパクトの力を活性化させるためにギデオンと共に犠牲となりました。彼女の炎の魔法とギデオンの献身が、多元宇宙を救う一助となったのです。この出来事は、灯争大戦のクライマックスを描いた小説『灯争大戦』に詳しく記されています。

兄弟戦争セットでの再登場

灯争大戦で犠牲になったと思われていたヤヤ・バラードですが、『兄弟戦争』セットの物語において、彼女は再びドミナリアに姿を現しました。これは、ウルザの搭の事故によって時間的に不安定になったドミナリアに、様々な時代の存在が引き寄せられた結果です。この再登場は、彼女が過去の出来事、特に兄弟戦争そのものに深く関わっていたこと、そして時間的な事象に対する彼女の魔法の性質が影響した可能性を示唆しています。

『兄弟戦争』の物語では、ヤヤは過去の自分と出会い、自身の歴史やウルザ、テフェリーといった人物との関係を再確認しました。この再登場は、彼女の物語に新たな展開をもたらし、古のプレインズウォーカーとしての彼女の存在感を再び確立しました。

結び

ヤヤ・バラードは、ドミナリアの氷河期から始まり、兄弟戦争、大いなる修復、そして灯争大戦といった多元宇宙の歴史における重大な出来事を生き抜いてきた、極めて特異なプレインズウォーカーです。炎を操る圧倒的な力と、アンデッドや冷気への根強い敵意は、彼女のアイデンティティを形成してきました。灯争大戦での自己犠牲的な行動は多くの読者に衝撃を与えましたが、『兄弟戦争』での再登場は、彼女の物語がまだ続いていることを示唆しています。ヤヤ・バラードの軌跡は、MTG世界の複雑で長い歴史の中で、古のプレインズウォーカーがいかに重要な役割を果たしてきたかを示す好例と言えるでしょう。