ウルザの遺産計画:兄弟戦争後のファイレクシア戦争に向けた多元宇宙級の準備
ウルザの遺産計画とは
兄弟戦争の終結後、プレインズウォーカーの灯に点火したウルザは、自身のかつての過ちによってファイレクシアの次元が発展を遂げ、多元宇宙全体にとって看過できない脅威となっていることを深く認識しました。特に故郷であるドミナリア次元が再び標的となる可能性が高いことを悟ったウルザは、千年にも及ぶ壮大な計画、通称「ウルザの遺産計画(Urza's Legacy Project)」に着手します。この計画は、ファイレクシアを完全に打倒するために必要な伝説級のアーティファクト群、「遺産(Legacy)」を多元宇宙各地で探し出し、開発し、最終的に一つに統合することを目指すものでした。これは、兄弟戦争で失われた力の全てを結集し、次元を超えた侵略者に対する最後の抵抗の基盤を築くための、ウルザの人生をかけた取り組みでした。
計画の背景と目的
兄弟戦争におけるウルザとミシュラの戦いは、ドミナリアに甚大な被害をもたらしただけでなく、ウルザのプレインズウォーカーの灯を覚醒させ、彼に多元宇宙の現実を広く認識させました。彼が見たのは、ヨグモスによって率いられるファイレクシアが、着実にその力を増強し、いずれドミナリアを含む全ての次元を「完成化」しようとする恐るべき未来でした。ウルザは、兄弟戦争で使用されたマイコシンスの核爆発のエネルギーが、ファイレクシア次元の成長を加速させてしまった可能性も認識しており、その責任を感じていました。
この脅威に対抗するため、ウルザは個人としての復讐心だけでなく、多元宇宙全体の守護者としての使命感を抱くようになります。しかし、兄弟戦争で消耗したドミナリアの戦力や、当時のプレインズウォーカーたちが個々の関心事に忙殺されている現状では、ファイレクシアの強大な軍勢に対抗することは不可能でした。そこでウルザは、かつての敵であったファイレクシアの技術を取り込みつつ、自身の知識とプレインズウォーカーとしての能力、そして多元宇宙各地に眠る古代の力や秘宝を結集する長期的な計画を立案します。これが「遺産計画」です。計画の最終的な目的は、全ての遺産を統合した「最終兵器」をもってファイレクシアの核、つまり次元そのものを破壊することでした。
遺産(レガシー)の要素とその探索
「遺産」と呼ばれるアーティファクト群は、単なる強力な武器の集まりではありませんでした。それらは兄弟戦争以前から存在する古代の秘宝、ウルザ自身が開発した技術、そして兄弟戦争の遺物などが含まれていました。ウルザは千年という歳月をかけ、次元を股にかけてこれらの遺産を探し求め、時には開発を行いました。主要な遺産とされる要素には以下のようなものがあります。
- ウェザーライト号(Skyship Weatherlight): 遺産計画の指揮船として建造された次元間を航行可能な飛空船。ウルザの技術の結晶であり、物語の後半では主要なキャラクターたちが搭乗しました。その設計には、古代ファルケンラスの技術などが用いられています。
- ジェラード・カパシェン(Gerrard Capashen): ドミナリアの英雄であり、ファルケンラス王家の血を引くウェザーライト号のクルー。実はウルザは彼の血統を計画の鍵として見出しており、彼自身が「生きている遺産」として計画に組み込まれていました。
- カーン(Karn): 兄弟戦争でウルザが開発した、時間移動能力を持つ銀のゴーレム。ウルザのプレインズウォーカーの灯の一部を受け継ぎ、後にプレインズウォーカーとなります。遺産計画における重要なファクターであり、最終的なファイレクシア打倒の鍵の一つとなりました。
- ムルタニ(Multani): ヤヴィマヤの森の精霊であり、強大な力を持つ存在。ウルザはヤヴィマヤの防衛のために彼と協力関係を築き、ヤヴィマヤ自身をファイレクシアへの抵抗拠点の一つとしました。
- シッセイ(Sisay): ウェザーライト号の船長。遺産探索における実働部隊を率い、多くの危機を乗り越えました。
- その他の遺産: ギトゥの杖、ブラックブレード、タラナの宝剣、スランのメダルなど、多元宇宙各地に散らばる強力なアーティファクトが遺産として収集されました。
ウルザはこれらの遺産を収集・開発する過程で、ドミナリアのアカデミー設立(トロウマの学院など)、次元を渡る技術の研究、ヤヴィマヤの森やセラ次元との連携など、多岐にわたる活動を行いました。これらの過程は、『ウルザズ・サーガ』、『ウルザズ・レガシー』、『ウルザズ・デスティニー』といったセットや、関連する小説シリーズで詳細に描かれています。
計画の進行と困難
ウルザの遺産計画は千年という長い期間を要したため、多くの困難と犠牲を伴いました。ウルザ自身はファイレクシアへの憎悪に駆られ、時に非情な手段を選び、彼の計画は多くの無垢な命を巻き込みました。セラ次元の崩壊、ヤヴィマヤでの内紛、そしてウェザーライト・クルーが直面する数々の危機は、全てこの計画とファイレクシアの干渉によって引き起こされたものでした。
特に、生きている遺産としてのジェラードや、ウルザの技術の結晶であるカーンは、計画の中心でありながらも、ウルザの真意を知らされずに危険な任務に関わることになります。ウェザーライト・クルーは、ファイレクシアとの戦いの中で仲間を失い、裏切りや苦悩を経験しながらも、遺産を巡る冒険を進めました。
遺産計画の結末と影響
ウルザの遺産計画は、最終的にファイレクシアによるドミナリア侵攻、通称「インベイジョン」においてその真価を発揮することになります。集められた遺産はウェザーライト号に統合され、ファイレクシアの次元間ポータルを破壊し、ドミナリアを防衛するための重要な戦力となりました。
そして物語は『インベイジョン』ブロックを経て『アポカリプス』へと進み、統合された遺産とウェザーライト・クルー、ドミナリア連合、そして次元を超えて集結したプレインズウォーカーたちの協力によって、ファイレクシアの核たるヨグモスとの最終決戦を迎えます。ウルザは自身の命を犠牲にして、彼の「目」と「石」という遺産の一部と、カーン、そしてジェラードを最後の攻撃に導き、ヨグモスを打ち倒すことに成功しました。
ウルザの遺産計画は、千年もの間、ファイレクシアという強大な敵に対抗するための礎となりました。多くの犠牲を払った計画ではありましたが、結果としてドミナリア、そして多元宇宙をファイレクシアの支配から救うことに貢献したのです。カーンはウルザの遺志を継ぎ、ファイレクシアの脅威と向き合い続けることになります。この計画によって集められ、統合された遺産は、その後のMTGの物語においても重要な役割を果たしていくことになります。