ウェザーライト号とその搭乗員たちの軌跡:ウルザの遺産を巡る長き旅路
はじめに
マジック:ザ・ギャザリングの物語において、次元を超えて旅をする「飛空挺」は特別な存在ですが、中でも最も長く、そして最も重要な役割を果たしたのが「ウェザーライト号」です。この伝説的な船は、兄弟戦争終結後からファイレクシアとの大戦終結に至るまで、ウルザの遺産計画の中核を担い、多くの次元を巡り、多元宇宙の命運を賭けた戦いの舞台となりました。本記事では、ウェザーライト号の建造から、その長きにわたる旅路、そして関わった主要な人物たちの軌跡を、物語の時系列に沿って詳細に解説します。
ウェザーライト号の建造とウルザの遺産計画
ウェザーライト号は、プレインズウォーカーであるウルザが、兄弟戦争終結後の千年以上にわたるファイレクシアへの復讐と、将来の多元宇宙規模での侵攻に備えるために推進した「遺産計画」の一部として建造されました。彼は、宿敵ファイレクシアの支配者ヨーグモスに対抗するため、強力なマジックのアーティファクト群である「ウルザの遺産」を創出し、それを運用するための旗艦としてウェザーライト号を設計しました。
ウェザーライト号の特筆すべき点は、次元渡り(プレインズウォーク)能力を持つことです。これは、次元間のマナの流れを利用する特殊な技術によって実現されており、プレインズウォーカーの力に頼らずとも次元を超えた航行が可能でした。これは、ウルザがファイレクシアとの戦いを特定の次元に限定せず、多元宇宙全体で戦う計画を立てていたことの現れです。
ウルザの遺産を巡る旅と主要搭乗員
ウェザーライト号の初期の旅の目的は、各地に隠されたウルザの遺産を収集することでした。この任務には、ウルザ自身が直接関与することは少なく、選ばれた非プレインズウォーカーの搭乗員たちが中心となりました。
ウェザーライト号の物語が本格的に始まるのは、ミラージュ・ブロック(『ミラージュ』、『ビジョンズ』、『ウェザーライト』)の時代です。この頃のウェザーライト号は、シッセイ船長率いるクルーによって運用されていました。しかし、ウルザの宿敵の一人であるヴォルラス(元はウェザーライト号の一員だったジェラードの義兄弟)の策略により、シッセイが捕らえられてしまいます。
シッセイを救出し、ウェザーライト号の新たな指揮官となったのが、ドミナリアのコイロス家の血を引くジェラード・カパシェンです。彼は、ウルザが遺産計画の中心人物として見込んでいた人物でした。ジェラードは、伝説のクリーチャーであるカーン(ウルザが銀のゴーレムとして創造し、後にプレインズウォーカーとなった)や、天才的な船大工ハナ、操舵手シダー、医師エラダムリー、戦士タエールといった個性豊かな仲間たちと共に、ヴォルラスやファイレクシアの追跡をかわしながら、失われた遺産「ウェザーライト」のパーツを捜索する旅を続けました。
この旅の過程で、ウェザーライト号とその搭乗員たちは様々な次元を訪れました。テンペスト・ブロック(『テンペスト』、『ストロングホールド』、『エクソダス』)では、人工次元ラースでのヴォルラスとの激闘、レギオン・ブロック(『メルカディアン・マスクス』、『ネメシス』、『プロフェシー』)では、メルカディア次元での冒険など、様々な出来事を経験し、多くの仲間を得たり失ったりしながら、ウルザの遺産を順次集結させていきました。
ファイレクシア戦争の中心として
インベイジョン・ブロック(『インベイジョン』、『プレーンシフト』、『アポカリプス』)で描かれるファイレクシアによる多元宇宙規模の侵攻、通称「ファイレクシア戦争」では、ウェザーライト号はドミナリア連合軍の旗艦として、戦いの最前線に立ちました。収集されたウルザの遺産は、ウェザーライト号に統合され、船自体がファイレクシアに対抗するための強力な兵器となりました。
この大戦中、ウェザーライト号はヨーグモスやその配下の法務官たちと激しく戦いました。多くの搭乗員が犠牲となり、船体も度重なる損傷を受けましたが、彼らは決して諦めませんでした。最終的に、ウェザーライト号はウルザの遺産と搭乗員たちの覚悟を結集させ、ドミナリア連合軍の勝利に大きく貢献しました。
特に、戦争の最終局面では、ウェザーライト号に搭載されたカーンが、ファイレクシアの心臓部であるウルザの目とヨーグモスの魂と融合し、プレインズウォーク能力が暴走することで、ドミナリアに残存していたファイレクシアの脅威を無力化し、さらに後の「大いなる修復」へと繋がる次元の変容を引き起こしました。ウェザーライト号自体も、この出来事によって大きな変貌を遂げました。
戦争終結後のウェザーライト号
ファイレクシア戦争が終結し、大いなる修復が起こった後も、ウェザーライト号はドミナリアに残されました。その後の物語(オデッセイ・ブロック、ローウィン・ブロックなど)では、直接的な主役となることは減りましたが、ドミナリアの歴史において重要な存在として語り継がれました。
『ドミナリア』(2018年)セットでは、修復されたウェザーライト号が登場し、ジェラードの後継者であるジェイムデーラ・アヴェンティを船長として、新たな搭乗員たちと共にドミナリアの危機に立ち向かう姿が描かれました。これは、かつての伝説的な船が、新しい世代へと受け継がれ、再び次元の平和のために活動していることを示しています。
結び
ウェザーライト号の旅路は、単なる飛空挺の航海ではなく、兄弟戦争後のドミナリア、そして多元宇宙全体の物語と深く結びついています。ウルザの遺産計画からファイレクシア戦争終結まで、ウェザーライト号は多くのプレインズウォーカーや非プレインズウォーカーの英雄たちの舞台となり、その機動性と搭載された遺産の力によって、多元宇宙の危機を何度も救いました。その存在と、船を動かした搭乗員たちの勇気と犠牲は、MTGの壮大なストーリーにおける象徴的な物語として、今なお多くのファンに語り継がれています。ウェザーライト号の軌跡を追うことは、MTG世界の複雑な歴史を理解する上で非常に重要な要素の一つと言えるでしょう。