プレインズウォーカー年代記

大いなる修復(The Great Mending):プレインズウォーカーの性質を変化させた次元の出来事

Tags: 大いなる修復, The Great Mending, プレインズウォーカー, MTG歴史, ドミナリア

大いなる修復(The Great Mending)とは

マジック:ザ・ギャザリングの世界において、「大いなる修復(The Great Mending)」は、多次元宇宙(Multiverse)とその住人、特にプレインズウォーカーのあり方を根本的に変化させた極めて重要な出来事です。これは、ドミナリア次元を中心に発生した時間の歪みとそれに伴う次元の不安定化が最終的に修復されたプロセスを指します。この出来事によって、それまで無限に近い力と不老不死性を持ち、容易に次元間を移動できた旧世代のプレインズウォーカーは、有限の寿命と力を持ち、より困難な次元渡りを行う新世代のプレインズウォーカーへと変貌しました。

出来事の背景と発生

大いなる修復へと繋がる根源的な原因は、ドミナリア次元における度重なる時間操作と、ウルザによる壮大な次元エネルギーを用いた実験の積み重ねにあります。特に、兄弟戦争とその後のクロノロジーにおける時間の歪曲や、ウルザがファイレクシアに対抗するために行った数々の試みが、多次元宇宙の構造に深い傷を与えました。

これらの歪みは「時の裂け目(Time Rift)」として顕在化し、ドミナリアとその周辺次元を不安定化させ、やがて多次元宇宙全体に深刻な影響を及ぼす事態に発展しました。時の裂け目は自然法則を無視した現象を引き起こし、次元崩壊の危機を招いていたのです。

この危機に対し、テフェリー、カーン、ジェイムデーといったドミナリアの英雄たちは、次元そのものの崩壊を防ぐための行動を開始します。彼らは様々な次元を旅し、時の裂け目を閉じる方法を模索しました。

修復のプロセスとプレインズウォーカーへの影響

大いなる修復は、時のらせんブロック(『時のらせん』、『次元の混乱』、『未来予知』)の物語の中で描かれています。特に、テフェリーが自身のプレインズウォーカーの灯を犠牲にしてまで、故郷であるジャムーラの時の裂け目を閉じたことが、修復プロセスの大きな転換点となりました。彼の行動は連鎖反応を引き起こし、他の場所でも裂け目を閉じる動きが進みます。

最終的に、カーンが自身の存在を次元の安定化に捧げようとした際、多次元宇宙そのものが傷を癒やそうとするかの如く、自己修復を開始しました。この大規模な自己修復のプロセスこそが「大いなる修復」です。

この修復によって、多次元宇宙の時系列は安定を取り戻しましたが、その代償として、プレインズウォーカーの次元渡りの性質が劇的に変化しました。旧世代のプレインズウォーカーが持っていた膨大な力と不老不死性は失われ、彼らは人間と大差ない寿命と、次元渡りに集中力やエネルギーを必要とするようになりました。また、次元渡りの能力を持つ者の誕生自体も、以前より稀なものとなったとされています。

関連する人物と次元、そしてその後の影響

大いなる修復には、テフェリー、カーン、ジェイムデーといったドミナリアの人物が深く関与しました。また、ニコル・ボーラスのような旧世代のプレインズウォーカーもこの変化を経験し、新たな時代の力の均衡の中で活動を続けます。一方、ジェイス・ベレレン、リリアナ・ヴェス、チャンドラ・ナラー、ニッサ・レヴェインといった、大いなる修復以降にプレインズウォーカーの灯が覚醒した者たちは、最初から有限の力と寿命を持つ新世代として登場しました。彼らが後に「ゲートウォッチ」を結成し、エルドラージやファイレクシアといった脅威に立ち向かう物語は、大いなる修復によって新時代のプレインズウォーカーの役割が明確になった結果と言えます。

この出来事は、ドミナリア次元、そして多次元宇宙全体の物理法則と力のバランスを再構築しました。旧時代の物語のクライマックスであると同時に、新たな時代の物語(テーロス、ゼンディカー、イニストラード、ラヴニカなどのモダンストーリー)の幕開けを告げる出来事でした。

関連するMTGセットとしては、『時のらせん』、『次元の混乱』、『未来予知』といった時のらせんブロックが直接的にこの物語を描いています。これらのセットには、過去、現在、未来のカードが混在するというメカニズム的な表現で、時間の歪みと修復が表現されました。例えば、《ヴェズーヴァ》《貯蔵庫の光破り》といったカードは、この時代の背景を象徴しています。

結び

大いなる修復は、MTGの物語における最大の転換点の一つです。この出来事によってプレインズウォーカーは人間らしい存在へと変化し、彼らの行動や物語における役割は大きく変わりました。旧世代の神にも等しい存在から、より共感しやすい、時には弱さも見せるヒーローやヴィランへ。この変化が、その後のエルドラージとの戦いや、ニコル・ボーラスとの対立、そしてファイレクシアの脅威といった、現代のMTGストーリーの基盤を築き上げました。大いなる修復を理解することは、プレインズウォーカー年代記を追う上で、極めて重要な出発点と言えるでしょう。