プレインズウォーカー年代記

兄弟戦争:ウルザとミシュラの壮絶な戦いとその影響

Tags: 兄弟戦争, ウルザ, ミシュラ, ドミナリア, MTG歴史, プレインズウォーカー, ファイレクシア

兄弟戦争とは

マジック:ザ・ギャザリングの多元宇宙史において、「兄弟戦争」はドミナリア次元で発生した最も破滅的で、かつその後の世界の運命を決定づけた出来事の一つです。天才的なアーティファクト技師であったウルザとミシュラという兄弟が、一つの古代アーティファクトを巡る対立から始まり、次元全土を巻き込む大規模な戦争へと発展させました。この戦いはアージェンタムの時代(約4,000年前)に勃発し、ドミナリアの景観、文化、そして技術レベルに壊滅的な打撃を与え、「暗黒時代」と呼ばれる停滞期をもたらしました。同時に、この戦争はウルザをプレインズウォーカーへと覚醒させ、その後のファイレクシアとの長期にわたる戦いの契機となります。

戦争勃発までの背景

物語は、ウルザとミシュラがドミナリアのテリシア大陸、シヴ山脈にあるウルザの洞窟で、強力な古代アーティファクト「マイア」を発見したことに始まります。マイアは「力の石(Mighty Eye)」と「弱さの石(Weakstone)」という二つの対立する破片で構成されており、兄弟それぞれが一方の破片を所有しました。

ウルザは力の石を用いてシヴ地方で巨大なアーティファクト工学帝国を築き、ミシュラは弱さの石を用いて他の地方で勢力を拡大しました。当初は競い合うようにそれぞれの技術を発展させていましたが、アーティファクトへの飽くなき探求心と、互いへの不信感、そしてマイアの持つ破滅的な影響力が、次第に兄弟を敵対関係へと追いやります。特に、ミシュラは次元を渡る存在であるファイレクシアの工作員、特に悪魔的な存在であるヤーグルによって言葉巧みに誘導され、その思考や行動が歪められていきました。

兄弟戦争の経過

兄弟間の緊張はついに武力衝突へと発展します。ウルザはシヴを拠点とする連合軍を結成し、ミシュラはトーラノ率いる王国や、ファイレクシアの支援を受けた勢力を傘下に収めました。戦争はドミナリアの広範囲に及び、各地で大規模な戦闘や破壊が繰り返されました。

本論の重要な要素は以下の通りです。

戦争は数十年にわたり続き、ドミナリア全土は荒廃しました。この悲劇的な状況を終わらせるため、ウルザの妻カイラは古代の光の存在「サークル」を呼び覚ます儀式を行います。

戦争の終結とその後

カイラによって呼び覚まされたサークルは、マイアのエネルギーと共鳴し、想像を絶する光の爆発を引き起こしました。この大爆発はテリシア大陸の中心部を完全に破壊し、兄弟戦争を強制的に終結させました。爆発によりミシュラは死亡し、多くの兵士やクリーチャー、アーティファクトが消滅しました。

ウルザは、この爆発のエネルギーによって身体を失いましたが、彼の内にあった強大な火花が点火され、プレインズウォーカーとして覚醒しました。多元宇宙に放り出されたウルザは、自身とドミナリアを破滅に追いやったファイレクシアの存在、特にヤーグルが背後にいたことを悟り、ファイレクシアへの復讐と多元宇宙の救済を生涯の目的とすることになります。

兄弟戦争の結果、ドミナリアは地形が変わり果て、高度な技術は失われ、知識や文化も衰退しました。これは「暗黒時代」として知られる長い停滞期へと繋がります。しかし、ウルザのプレインズウォーカーとしての活動、特にファイレクシア打倒のための長期計画である「レガシー計画」は、その後のドミナリアおよび多元宇宙の物語の核となっていきます。

この出来事は、近年発売されたMTGセット『兄弟戦争』(The Brothers' War)で焦点が当てられ、当時の出来事や登場人物、アーティファクトなどがカードとして再構築され、多くのプレイヤーの注目を集めました。関連する小説やコミックも存在し、この悲劇的な物語の詳細を知る手がかりとなります。

ストーリー全体における位置づけ

兄弟戦争は、マジック:ザ・ギャザリングの初期から語られてきた最も重要な出来事の一つであり、後の多くの物語の起点となっています。ウルザがファイレクシアの脅威を認識し、彼らと戦うことを決意したこと、ドミナリアが暗黒時代を経て再興を目指す過程、そしてウルザのレガシー計画が「ウェザーライト・サーガ」へと繋がっていく流れは、全てこの兄弟戦争がなければ生まれ得ませんでした。

ウルザとミシュラの個人的な悲劇は、次元規模、さらには多元宇宙規模の存亡に関わる壮大な物語へと拡大していくのです。兄弟戦争を理解することは、その後のMTG世界の歴史、特にファイレクシアとの長い戦いの背景を知る上で不可欠であると言えます。