プレインズウォーカー年代記

ソリン・マルコフとナヒリ:千年を超える因縁とその激突

Tags: ソリン・マルコフ, ナヒリ, イニストラード, ゼンディカー, エルドラージ, プレインズウォーカー

古の絆から生じた千年を超える因縁:ソリン・マルコフとナヒリの軌跡

マジック:ザ・ギャザリングの多元宇宙には、数多の次元を渡り歩くプレインズウォーカーたちが存在します。その中でも特に長い時を生き、深い関わりを持つ古のプレインズウォーカーに、ソリン・マルコフとナヒリがいます。彼らはかつて、共にエルドラージという多元宇宙規模の脅威に立ち向かった仲間でした。しかし、その協力関係はやがて崩壊し、千年を超える激しい因縁へと発展しました。この因縁は、彼らが故郷と呼ぶ次元や、その他の無関係な次元にまで深刻な影響を及ぼし、多くの悲劇を引き起こすことになります。

本稿では、吸血鬼のプレインズウォーカー、ソリン・マルコフと、石術師のプレインズウォーカー、ナヒリの間に横たわる千年の歴史を紐解き、彼らの関係性の変遷、その因縁が引き起こした出来事、そしてそれがMTG世界全体に与えた影響について解説します。

エルドラージ封印という始まり

ソリン・マルコフ、ナヒリ、そして龍霊ウギン。この三者は、大いなる修復以前の、より強大な力を有していた古のプレインズウォーカーたちでした。彼らは、次元を食い荒らすエルドラージという脅威に対処するため、協力関係を築きました。ソリンがエルドラージの存在を察知し、ウギンが彼らを封印する計画を立て、そしてナヒリが自身の次元であるゼンディカーを封印の地に選び、石術の力を用いてエルドラージを次元内に閉じ込める装置を構築したのです。

紀元前4000年頃にゼンディカーでエルドラージが封印されて以降、三者はエルドラージの封印が維持されているか定期的に監視することを誓いました。ソリンは時折ゼンディカーを訪れ、ナヒリも自身の次元であるゼンディカーの状況を注意深く見守っていました。しかし、ウギンは自身の次元へと引きこもり、監視の役割から徐々に遠ざかっていきます。

ナヒリの嘆きと次元監獄での千年

ウギンとの連絡が途絶え、ソリンの訪問も稀になった紀元前600年頃、ナヒリはゼンディカーの封印が弱まっていることに気づきました。誓約に基づき、ナヒリはソリンとウギンに助けを求め、次元を渡り彼らを捜索しました。しかし、ソリンは自身の故郷であるイニストラード次元で創造した天使アヴァシンとその守護体系に心を奪われており、ナヒリの警告を真剣に受け止めませんでした。彼はナヒリに対し、「イニストラードの平和を脅かすようなことがあれば、お前を黙らせるために必要なことは何でもする」と冷たく言い放ったと言われています。

ソリンに見捨てられたと感じたナヒリは、怒りと絶望の果てに、ソリンの故郷であるイニストラードへと向かい、彼への復讐を試みました。彼女は石術の力でイニストラードの地下構造を操作し、地震を引き起こすなどしてソリンを追い詰めようとしました。最終的に、激怒したソリンはナヒリを捕らえ、石で作られた次元監獄に閉じ込めました。その監獄は、イニストラードの月の一つの中に隠されたと言われています。ナヒリはそこで、およそ千年もの長い時間を過ごすことになります。この千年という孤独な時間は、ナヒリのソリンに対する恨みを燃え上がらせ、彼女の精神を深く歪ませていきました。

復讐の連鎖:イニストラードの崩壊とゼンディカーの悲劇

ナヒリが次元監獄に囚われている間、ゼンディカーのエルドラージ封印はさらに弱まり、ついに紀元4600年頃に彼らは覚醒しました。この事態に気づいたソリンはゼンディカーを訪れ、エルドラージの脅威を改めて認識しますが、ナヒリが不在であることに気づきませんでした。

その後、エルドラージを再び封印する試みが失敗に終わり、プレインズウォーカーのジェイス、チャンドラ、ニッサ、ギデオンによって、エルドラージはゼンディカーで討ち果たされました(『戦乱のゼンディカー』ブロックの出来事)。

同じ頃、次元監獄から解放されたナヒリは、ソリンがエルドラージの脅威を放置し、自身を千年も監禁したことへの怒りを募らせていました。彼女の復讐心は、ソリンの故郷であるイニストラードへと向けられます。ナヒリはゼンディカーの面晶体を使ってイニストラード次元の均衡を崩壊させ、エルドラージの落とし子やそれ以上の異形のクリーチャーを呼び込みました。彼女の目的は、ソリンが大切にしているイニストラードを滅茶苦茶にすること、そしてソリン自身に苦しみを与えることでした。

ナヒリの介入は、イニストラードの守護者である天使アヴァシンを狂気に陥らせ、ソリン自らの手でアヴァシンを消滅させるという悲劇につながります(『イニストラードを覆う影』ブロックの出来事)。アヴァシンを失ったソリンは怒りに燃え、イニストラードでナヒリと激突。激しい戦闘の末、ソリンはナヒリによって石化されてしまいました。

灯争大戦とその後の関係性

石化から解放されたソリンは、その後もナヒリとの因縁を引きずり続けます。彼らはニコル・ボーラスによるラヴニカ侵攻「灯争大戦」の際にも、異なる思惑で戦場に姿を現しました。ナヒリはボーラスの配下として、ソリンは自身の目的のために戦いました。灯争大戦終結後も、彼らの関係性は修復されることなく、深い対立状態が続いています。

特に『イニストラード:真夜中の狩り』および『イニストラード:真紅の契り』においては、ソリンとナヒリは再びイニストラードで相まみえることになります。彼らの激しい対立は、イニストラードの夜が明けない、あるいは血の雨が降り注ぐといった次元規模の異変の一因となりました。ソリンはナヒリが再びイニストラードを混乱させていると考え、ナヒリはソリンこそが問題の根源だと主張し、互いを激しく非難しました。

まとめ

ソリン・マルコフとナヒリの因縁は、エルドラージ封印という共通の目的から始まり、誓約の無視、千年間の監禁、そして復讐という連鎖を経て、MTG世界の物語において繰り返し描かれる重要なテーマとなりました。彼らの対立はゼンディカー、イニストラード、そしてラヴニカといった複数の次元に悲劇をもたらし、多くのキャラクターの運命を左右しました。

古のプレインズウォーカーが持つ強大な力と、それが個人的な感情によって歪められた際に引き起こされる破滅的な影響を、ソリンとナヒリの物語は如実に示しています。彼らの因縁はまだ完全に終結しておらず、今後の物語において再び重要な役割を果たす可能性も十分に考えられます。プレインズウォーカー年代記では、今後も彼らの動向を追い続けてまいります。