サルカン・ヴォルの軌跡:タルキールの歴史改変と龍の運命
サルカン・ヴォルとタルキールの歴史改変
プレインズウォーカー、サルカン・ヴォルは、その故郷である次元タルキールと深く結びついています。かつて龍が支配し、絶えず戦乱が続いていたタルキールにおいて、サルカンは龍への畏敬と恐怖、そして精神的な不安定さに苛まれていました。彼のプレインズウォーカーの灯が点火したのも、内に響く声に突き動かされ、師であるニコル・ボーラスを求めて次元を渡った結果でした。しかし、ボーラスの真の姿を知り、その支配から逃れたサルカンは、自身の心の平安を求め、再び故郷たるタルキールへと向き合うことになります。彼の探求は、タルキールの過去に隠された真実、すなわち古の龍エルダードラゴン、ウギンの存在へと導かれ、最終的に次元全体の運命を変える歴史改変へと繋がります。
タルキールの過去への旅とウギンの救出
サルカン・ヴォルは、自身の中に響く「声」が、遥か昔にニコル・ボーラスによって打ち倒された龍、ウギンのものであることを知ります。ウギンはタルキールの歴史において重要な存在であり、その死がタルキールの現在の荒廃した状態に繋がっていると考えました。ウギンの救出こそが、自身の、そして故郷タルキールの救済に繋がるという確信を得たサルカンは、ウギンの精神的な導きを受け、時間魔道士テフェリーが残した時間の裂け目を通じて、遥か過去のタルキールへと遡行することを試みます。
この時間遡行は、『運命再編』セットで描かれた物語の中心となります。サルカンは、タルキールの過去、具体的には約1000年前、ウギンとニコル・ボーラスが戦った時代へと降り立ちます。彼はこの歴史的な決闘の現場に立ち会い、瀕死のウギンを発見します。サルカンは、ウギンの魂が完全に消滅する前に、彼自身の生命力と精神力をウギンのために注ぎ込み、ウギンの魂を安定させ、ウギンが完全に消滅することを阻止しました。この行為は、歴史の流れに対する直接的な干渉であり、タルキールの歴史、そして多元宇宙の運命に計り知れない影響を与えることになります。
歴史改変の結果:龍紀伝のタルキール
サルカン・ヴォルによるウギンの救出という歴史改変の結果、タルキールの未来は大きく変化しました。過去においてウギンが生存したことで、タルキールにおける龍の運命が変わったのです。本来であれば絶滅の淵にあった龍たちは、ウギンの存在によってその勢力を保ち続け、タルキールは再び龍が支配する次元として再構築されました。
この新たな歴史の流れは、『タルキール龍紀伝』セットで描かれています。サルカンが現代のタルキールに戻ると、そこは彼が知っている世界とは全く異なる次元になっていました。かつて彼が属していたクリーチャー・タイプである「カン」(人間、オーク、マーフォークなどの部族)が支配する時代ではなく、龍王たちがそれぞれの氏族を率いてタルキールを支配する時代になっていたのです。ウギンは生きており、サルカンの存在は新たな歴史の中に組み込まれていました。
この歴史改変は、多くのタルキール出身のクリーチャー・タイプや人物の運命を変えました。例えば、本来は生きていないはずの龍王オジュタイ、シディシ、シルムガル、アタルカ、コラガンなどが健在となり、それぞれが氏族(オジュタイ、スゥルタイ、シルムガル、アタルカ、コラガン)を率いています。また、サルカンが属していた氏族「ジェスカイ」のカンであったナールスは、龍王オジュタイの弟子となっていました。最も劇的な変化の一つは、本来サルカンが所属していたクリーチャー・タイプである「ナーガ」の存在が、龍が支配する世界においては非常に稀になっていたことです。
影響と結び
サルカン・ヴォルによるタルキールの歴史改変は、単に一つの次元の運命を変えただけでなく、多元宇宙全体の物語にも影響を与えました。ウギンが生存したことは、その後のニコル・ボーラスとの対決や、エルドラージに対する多元宇宙の防御において極めて重要となります。サルカン自身も、故郷の歴史を変えたという重責を背負いつつも、ウギンという強力な味方を得て、その後の多元宇宙の危機において重要な役割を担うことになります。この出来事は、プレインズウォーカーの行動が次元や時間軸を超えてどれほど大きな影響力を持つかを示す、象徴的な物語の一つと言えるでしょう。