ファイレクシア:完全なる統一の出来事:プレインズウォーカーたちの完成化と潜入作戦の終焉
新ファイレクシアへの潜入作戦:唯一の破壊を目指して
『ファイレクシア:完全なる統一』セットの物語は、多元宇宙全体にファイレクシアの脅威が広がる直前の緊迫した状況を描いています。この物語の中心は、新ファイレクシアの心臓部である「唯一(The compleat system)」を破壊し、増大し続けるファイレクシアの脅威を根源から絶つための、プレインズウォーカーたちによる決死の潜入作戦です。
出来事の背景と目的
この潜入作戦の背景には、カーンがミラディン次元がファイレクシアに侵食され「新ファイレクシア」へと変貌した悲劇があり、その根源を断つという強い決意がありました。彼は唯一を破壊するための計画を立て、次元を超えて協力者を募ります。これに応じたのは、かつてゲートウォッチとして共に戦った仲間たちの他、この脅威を看過できない多くのプレインズウォーカーたちでした。彼らの目的はただ一つ、新ファイレクシアへの潜入に成功し、次元橋を通じて多元宇宙への侵攻を可能にする唯一を破壊することでした。
真鍮の都への道のりと悲劇
新ファイレクシアに潜入したプレインズウォーカーたちは、その完成された構造と異様な生態系に直面します。潜入チームはいくつかのグループに分かれ、それぞれの担当する球層を進んでいきました。真鍮の都に到達し、唯一の心臓部に迫るためには、五つの球層それぞれを突破する必要がありました。
しかし、新ファイレクシアは侵入者を迎え撃つべく完全に準備されており、プレインズウォーカーたちは想像を絶する困難に直面します。特に悲劇的だったのは、新ファイレクシアの完成化(Compleation)の力でした。かつてミラディン人の抵抗組織に協力した月の賢者タミヨウが『神河:輝ける世界』で完成化されたことは、この脅威の深刻さを示す前兆でした。
『ファイレクシア:完全なる統一』の物語では、この完成化が多くのプレインズウォーカーに及びます。潜入作戦中に捕らえられたり、新ファイレクシアの毒に侵されたりしたジェイス・ベレレン、ニッサ・レヴェイン、ナヒリ、ルカ、クイントリウス・カンドラなど、強力な力を持つプレインズウォーカーたちが次々とファイレクシアの一部へと変貌していきました。彼らの個性や記憶は歪められ、多元宇宙を救うはずだった英雄たちが、多元宇宙を脅かす存在へと変わってしまったのです。
抵抗を続けたプレインズウォーカーたちも、多くの犠牲を払い、作戦の目標である唯一の破壊を達成することはできませんでした。テフェリーは、唯一の脅威を一時的に遅延させるために、自己犠牲的な時間操作を行いました。カーンは捕らえられ、唯一の破壊計画は失敗に終わります。
作戦の結末とその後への影響
『ファイレクシア:完全なる統一』で描かれた潜入作戦は、プレインズウォーカー側の壊滅的な敗北という形で幕を閉じました。多くの仲間を完成化によって失い、唯一を破壊することもできず、プレインズウォーカーたちは新ファイレクシアから撤退せざるを得なくなりました。
この出来事は、新ファイレクシアがもはや単一の次元に閉じ込められた脅威ではなく、多元宇宙全体にとって差し迫った危機であることを明確に示しました。完成化されたプレインズウォーカーたちは、エルズペス・ティレルが故郷を追われたように、それぞれの次元に戻ることができなくなり、新ファイレクシアの尖兵として活動することになります。
この失敗と悲劇は、続く『機械兵団の進軍』で描かれる新ファイレクシアによる多元宇宙規模の侵攻を直接的に引き起こす契機となりました。失意と怒りの中で、残されたプレインズウォーカーたちは、それぞれの次元で迫りくるファイレクシアの軍勢と対峙するための準備を余儀なくされます。『ファイレクシア:完全なる統一』は、多元宇宙の歴史において、ファイレクシアという脅威がかつてないレベルに到達したことを示す、暗くも決定的な転換点となったのです。