プレインズウォーカー年代記

オブ・ニクシリスの軌跡:堕天使から悪魔のプレインズウォーカーへ

Tags: オブ・ニクシリス, プレインズウォーカー, 悪魔, ゼンディカー, イニストラード

導入

マジック:ザ・ギャザリングの多元宇宙には、様々な来歴を持つプレインズウォーカーが存在します。その中でも特に異彩を放つのが、元天使でありながら堕落して悪魔となった存在、オブ・ニクシリスです。彼は強力なプレインズウォーカーとしての力を持ちながら、かつて灯を失い、それを取り戻すために手段を選ばない冷酷な悪魔として、数多くの次元で暗躍してきました。この記事では、オブ・ニクシリスの特異な軌跡を、公式設定に基づき時系列に沿って詳細に追っていきます。

堕落とプレインズウォークの始まり

オブ・ニクシリスは、かつてウルグローサという次元に住む高位の天使でした。彼はその次元の創造者であり、その力を誇っていました。しかし、彼は自身の力と知識に対する飽くなき探求心を抱き、それが堕落の道を歩むきっかけとなります。彼は禁断の知識や力に手を染め、その過程で天使としての本質を失い、悪魔へと変貌を遂げました。この堕落と同時に、彼のプレインズウォーカーの灯が点火したとされています。悪魔となったオブ・ニクシリスは、多元宇宙を渡り歩く力を得て、さらなる力と支配を求めて様々な次元で暗躍を開始しました。

ゼンディカーでの灯の喪失

オブ・ニクシリスの長い歴史において、最も決定的な出来事の一つが、ゼンディカー次元での灯の喪失です。彼はゼンディカーの持つ強力なマナに目をつけ、この次元を自身の支配下に置こうと企みました。しかし、ゼンディカーには次元そのものが持つ強力な自己防衛機能が存在しました。オブ・ニクシリスは、その防御機構の一つであるヘドロン・ネットワークによって捕らえられ、次元の核深部に封印されてしまいます。この際に、彼のプレインズウォーカーの灯が完全に消滅し、彼はゼンディカーから脱出する手段を失いました。彼は長きにわたりヘドロンに閉じ込められ、灯のない悪魔として孤独な時を過ごしました。

このオブ・ニクシリスが閉じ込められていた場所に、ジェイス・ベレレンがウギンを追って訪れたことがきっかけで、封印が破られます。この出来事は、後にゼンディカーを襲うエルドラージの真の覚醒にも間接的に繋がっていったとされています。

イニストラードでの暗躍と灯の奪還

ゼンディカーから脱出したオブ・ニクシリスは、失ったプレインズウォーカーの灯を取り戻すという新たな野望を抱きます。彼は灯を取り戻す方法を探し求め、最終的にイニストラード次元へとたどり着きました。イニストラードでは、彼は次元の支配者であるソリン・マルコフによって再び封印されてしまいますが、後にソリンが自身の創造物である天使アヴァシンの狂乱を鎮めるために、オブ・ニクシリスを解放せざるを得ない状況が生まれます。

解放されたオブ・ニクシリスは、イニストラードの吸血鬼であるオリヴィア・ヴォルダーレンと取引を結び、次元の混乱を利用して自身の目的を達成しようと試みます。彼はまた、ラヴニカへの帰還後にデーモン契約を破棄したプレインズウォーカー、リリアナ・ヴェスとも対立しました。最終的に、オブ・ニクシリスはイニストラードの力を利用して、自身のプレインズウォーカーの灯を再点火させることに成功します。これは、非常に稀有な事例であり、彼の執念の強さを示す出来事でした(セット『異界月』の出来事)。

ニューカペナ、そして機械兵団の進軍

灯を再点火させたオブ・ニクシリスは、再び多元宇宙を自由に渡り歩けるようになります。彼はその後、ニューカペナ次元のストーリー(『ニューカペナの街角』ブロック)にも登場しました。ここでは、彼は五大ファミリーの一つ、シセンテのファミリアと関わりを持ちますが、最終的にはプレインズウォーカーであるヴラスカとの対決に敗れ、次元から撤退することとなります。この時期、ファイレクシアの脅威は多元宇宙に広がりつつありましたが、オブ・ニクシリスはニューカペナの時点ではファイレクシア化からは免れていました。

しかし、多元宇宙規模でファイレクシアの侵攻が始まる『機械兵団の進軍』において、オブ・ニクシリスはファイレクシア側のクリーチャーとして登場します(例:《冒涜されたもの、オブ・ニクシリス》)。これは、彼がプレインズウォーカーとしての力を失い、ファイレクシアに利用される存在、あるいは協力する存在となったことを示唆しています。堕天使から悪魔となり、灯を失い、再点火させた果てに、機械兵団の一員となった彼の最終的な運命は、依然として物語の中で描かれ続けています。

結び

オブ・ニクシリスは、MTGのストーリーにおいて、単なる悪役にとどまらない複雑な背景を持つキャラクターです。天使からの堕落、ゼンディカーでの悲劇、イニストラードでの復活、そしてファイレクシアとの関連と、その軌跡は常に力と支配への欲望に彩られています。彼の物語は、野望がどのように存在を変容させるかを示す一例であり、今後のMTGストーリーにおいて、彼がどのような役割を果たすのか、あるいはどのような結末を迎えるのかは、読者の大きな関心事の一つとなっています。彼の物語を追うことは、MTG世界の暗部と、プレインズウォーカーという存在の光と影を理解する上で欠かせない要素と言えるでしょう。