古の龍、ニコル・ボーラスの軌跡:多元宇宙支配への野望とその終焉
古の龍、ニコル・ボーラスとは
マジック:ザ・ギャザリングの多元宇宙において、ニコル・ボーラスは最も古く、そして最も強大な存在の一人として知られています。兄弟戦争以前の遥か昔にプレインズウォーカーの灯を得た古の龍であり、その存在は多元宇宙の歴史に深く刻まれています。知識、力、そして何よりも支配への飽くなき野望を原動力として、彼は様々な次元を股にかけ、数千年にわたり多くの悲劇と混乱を引き起こしてきました。この記事では、ニコル・ボーラスの誕生からその絶大な影響力、そして灯争大戦における終焉までの軌跡を、時系列に沿って追っていきます。
古のプレインズウォーカーとしての黎明期
ニコル・ボーラスは、兄弟戦争よりさらに古い時代にドミナリア次元で生まれた、次元を渡る能力を持つ五体の龍のうちの一体です。彼と彼の兄弟姉妹は、それぞれ異なる種類のマナと関連付けられていました。ボーラスは黒と青、そして赤のマナに深く関連しています。古の龍の中でも特に強力であったボーラスは、自身の灯が点火し、強力なプレインズウォーカーとなりました。
この時代、大いなる修復以前のプレインズウォーカーはほぼ不死であり、自身の次元の創造すら可能なほどの絶大な力を持っていました。ボーラスはこの力を最大限に活用し、知識と力を蓄積していきます。彼の兄弟である龍霊ウギンとは、思想や力の追求方法において対立関係にあり、これが後の長い因縁の始まりとなります。特にドミナリアのメドウェイ・プラヤにおける兄弟間の戦いは伝説として語り継がれています。
大いなる修復と策謀の開始
ドミナリアを襲った「時のらせん」の出来事とその解決のために行われた「大いなる修復」(The Great Mending)は、多元宇宙の物理法則を大きく変化させました。これにより、プレインズウォーカーはその絶大な力と不老不死を失い、より有限な存在となりました。ニコル・ボーラスも例外ではなく、この力の減衰は彼の野望に大きな障害となりました。
自身の力の回復と、再び多元宇宙の頂点に立つことを目指したボーラスは、より狡猾で長期的な計画を実行に移し始めます。彼は自身の本拠地として、様々な次元から資源や情報を集めるための拠点を築き上げ、配下となる者たちを育成・利用しました。ラヴニカ次元のギルドパクト崩壊への関与、そして様々な次元で暗躍するテゼレットのようなエージェントの活用は、彼の計画の一端です。
多様な次元への干渉と「不滅の太陽」の探索
ボーラスの策謀は多くの次元に及びました。アラーラ断片では、再融合した次元におけるマナの衝突を利用し、自身の力を強化しようと試みました。アモンケット次元では、数千年にわたり欺瞞的な神として君臨し、自身の不朽者の軍団を構築しました。この軍団は、来るべき多元宇宙規模の戦争における強力な戦力となるはずでした。
イクサラン次元への関与も重要です。ボーラスは、プレインズウォーカーの灯を一時的に抑え込む強力なアーティファクト「不滅の太陽」の存在を知り、これを手に入れるために配下を派遣しました。同時期にジェイス・ベレレンやヴラスカといったプレインズウォーカーもイクサランに滞在しており、彼らの行動がボーラスの計画に影響を与えます。最終的に不滅の太陽はボーラスの手に渡ることとなります。
灯争大戦の勃発と終焉
「灯争大戦」は、ニコル・ボーラスの長きにわたる策謀の集大成でした。不滅の太陽をラヴニカ次元の中心に据え、次元間の橋である「次元渡りの門」を操作することで、多元宇宙中のプレインズウォーカーをラヴニカに強制的に集めました。彼の究極の目的は、数多くのプレインズウォーカーの灯を根こそぎ奪い、再び大いなる修復以前のような絶大な力を取り戻すことでした。
ラヴニカ中が不朽者とファイレクシアの影響を受けたテゼレットが操るゲートウォッチの兵器に襲われる中、世界中から集まったプレインズウォーカーたちがこれに立ち向かいました。ゲートウォッチのメンバーやラヴニカのギルドたち、そしてニコル・ボーラスに対抗するあらゆる勢力が結集し、次元の存亡をかけた壮絶な戦いが繰り広げられました。
この大戦のクライマックスで、ニコル・ボーラスは宿敵である龍霊ウギン、そしてエルズペス・ティレル、カーン、ジェイス・ベレレン、ウリエット・オンドラといった多くのプレインズウォーカーたちの連携によって追い詰められます。最終的に彼は肉体を破壊され、精神は彼の兄弟であるウギンによって、時間の流れから隔離された特別な監獄へと収監されました。これにより、数千年にわたるニコル・ボーラスの多元宇宙支配の野望は、事実上の終焉を迎えました。
結び
ニコル・ボーラスの軌跡は、MTG世界の歴史において最も暗く、そして影響力の大きな章の一つです。彼の野望と策謀は、多くの次元に傷跡を残し、多くのプレインズウォーカーたちの運命を狂わせました。特に灯争大戦は、プレインズウォーカーという存在自体のあり方を再定義し、多元宇宙全体の力学を変化させる決定的な出来事となりました。
彼の物語は灯争大戦で一旦の幕を閉じましたが、彼の存在が多元宇宙に残した影響は計り知れません。また、彼が収監されたままであるのか、それとも何らかの形で再び脅威となりうるのかは、今後のストーリー展開における興味深い焦点の一つと言えるでしょう。ニコル・ボーラスの軌跡を辿ることは、MTG世界の壮大な物語構造を理解する上で不可欠な要素です。