プレインズウォーカー年代記

新ファイレクシアによる完成化:そのメカニズムとプレインズウォーカーへの影響

Tags: ファイレクシア, 完成化, プレインズウォーカー, 新ファイレクシア, 機械兵団の進軍

新ファイレクシアによる「完成化」とは

マジック:ザ・ギャザリングの物語において、新ファイレクシアは多元宇宙全体に広がる最も深刻な脅威の一つとして描かれています。その拡大戦略の中心にあるのが、有機生命体を機械の部品と融合させ、ファイレクシアの制御下に置くプロセス、通称「完成化(Compleation)」です。これは単なる肉体的な改造にとどまらず、個の意識や自由意志を奪い、ファイレクシアの集合意志へと組み込む精神的な変容も含みます。

完成化の起源と変遷

ファイレクシアによる生命体の改造という概念は、古くは Yawgmoth(ヨーグモス)によって統治されていた第一次ファイレクシアの時代から存在しました。しかし、新ファイレクシアにおける「完成化」は、特にプレインズウォーカーを標的とする際に顕著な形で現れ、そのメカニズムや結果において、過去の「完成(Completion)」とは異なる側面を持つようになりました。

新ファイレクシアの誕生後、五つの法務官たちはそれぞれ独自の研究を進める中で、Jin-Gitaxias(ジン=ギタクシアス)は特に生命体の進化、そしてプレインズウォーカーの持つ「灯(Spark)」と次元渡り能力に関心を寄せました。彼の研究は、プレインズウォーカーという極めて強力な存在をファイレクシアの支配下に置き、多元宇宙征服の道具とすることを目的としていました。この研究から生まれたのが、プレインズウォーカーの灯を破壊せずに、あるいはその機能を変質させつつ、対象をファイレクシア化する技術、すなわち新ファイレクシア流の「完成化」です。

完成化のプロセスとプレインズウォーカーへの影響

完成化のプロセスは、対象の肉体を機械の部品と融合させる外科的な改造と、精神をファイレクシアの教義に染め上げる洗脳を伴います。この変容は不可逆的であり、一度完成化された存在は、以前の自我や忠誠を失い、新ファイレクシアの意志に従うようになります。

プレインズウォーカーの場合、このプロセスはさらに複雑です。プレインズウォーカーの灯は、次元を渡るための極めて個人的で強力な力であり、その存在そのものと深く結びついています。ジン=ギタクシアスらは、この灯を消滅させることなく完成化を成功させる方法を模索しました。

初期の実験体であったTamiyo(タミヨウ)の完成化は、その成功例としてファイレクシアの戦略に大きな転換点をもたらしました。タミヨウは完成化されたにも関わらず、そのプレインズウォーカーの灯と次元渡り能力を維持しました。これは、完成化が必ずしも灯の消失を意味しないこと、そしてファイレクシアが完成化されたプレインズウォーカーを「機械兵団の進軍」のような多元宇宙規模の侵攻に利用できることを示しました。

その後、多次元に渡るファイレクシアの工作により、Jace Beleren(ジェイス・ベレレン)、Vraska(ヴラスカ)、Kaito Shizuki(カイト・シヅキ、不完全に留まった)、Nahiri(ナヒリ)、Ral Zarek(ラール・ザレック)といった複数のプレインズウォーカーが完成化されました。これらの完成化されたプレインズウォーカーは、新ファイレクシアの尖兵として、故郷やかつての仲間を攻撃する役割を担いました。彼らはそれぞれ異なる程度の肉体的・精神的な変容を遂げましたが、タミヨウと同様に次元渡り能力を保持しているケースが多く見られました。

完成化の意義と物語における位置づけ

新ファイレクシアによる完成化、特にプレインズウォーカーの完成化は、「機械兵団の進軍」ストーリーにおいて中心的な脅威として描かれました。完成化されたプレインズウォーカーは、新ファイレクシアが多元宇宙のあらゆる次元へ同時に侵攻するための重要な手段となりました。これは、次元渡り能力を持たない通常のファイレクシア軍にとって突破不可能だった次元間の壁を無効化するものでした。

完成化は、犠牲となったプレインズウォーカーたち自身の悲劇であると同時に、MTG世界の住人たちにとって、最も信頼できる守護者たちが敵に回るという絶望的な状況を生み出しました。これは多元宇宙規模での抵抗勢力「多元宇宙の解放(March of the Machine)」を結集させる契機ともなりました。

「機械兵団の進軍」の終結により、新ファイレクシアはその支配力と影響力を大きく失いましたが、完成化されたプレインズウォーカーたちの運命は複雑なままです。一部は元の状態に戻る試みがなされたり、あるいは新たな道を歩み始めたりしており、完成化が彼らの軌跡に与えた影響は、今後のストーリーにおいても重要な要素であり続けるでしょう。完成化は、個の尊厳と自由意志に対するファイレクシアの根本的な敵対姿勢を象徴する現象であり、MTG物語における主要なテーマの一つとして位置づけられています。