ミラディン・ファイレクシア戦争:鏡の次元の抵抗と絶望
ミラディン・ファイレクシア戦争とは
ミラディン・ファイレクシア戦争は、鏡の次元ミラディンにおいて、次元本来の住人や外部から流入した勢力と、次元の地下から増殖したファイレクシア勢力との間で繰り広げられた、次元の命運を賭けた大規模な戦争です。かつてカーンによって創造され、平和な金属次元であったミラディンは、ファイレクシアの油の汚染によって内側から蝕まれ、やがてその姿を新ファイレクシアへと変貌させることになります。この戦争は、その変貌の過程で起こった、抵抗と絶望の物語です。
戦争の始まりと両陣営
この戦争の本格的な始まりは、カーンがミラディンに帰還し、同時にファイレクシアの油の汚染が表面化した時期に遡ります(『ミラディンの傷跡』ブロック)。ミラディンのコアに巣食っていたファイレクシアは、数千年の潜伏期間を経て十分な力を蓄え、次元全体への影響力を拡大させていました。
ミラディン側は、かつてミラディンを支配していたメムナークが残した機械生命体「マイア」、太陽網の創造者「ナール」、ヴァンダルガストの戦士「コスの」、ミラディン生まれのプレインズウォーカー「ケイヤ」、そして次元を訪れたプレインズウォーカー「エルズペス・ティレル」や「コトリ・ウメノ」らを中心とした抵抗勢力が結成されました。彼らは共通の敵であるファイレクシアに対抗するため、種族やイデオロギーの違いを超えて連携を試みました。
対するファイレクシア側は、法務官と呼ばれる五人の指導者(エリシュ・ノーン、ジン=ギタクシアス、シェオルドレッド、ウルテッサ、ヴォルラス)によって率いられる五つの派閥を中心に構成されていました。彼らは完成化と呼ばれるプロセスを通じて、ミラディンの生命体をファイレクシアの被造物へと変容させ、数を増やしていきました。それぞれの派閥は異なる戦略とイデオロギーを持っていましたが、ミラディンをファイレクシア化するという共通の目標のために、冷徹かつ効率的に侵攻を進めました。
激化する戦況と抵抗の行方
戦争が進行するにつれて、ファイレクシアの勢力は圧倒的な速度で増殖・拡大していきました。ミラディンの地形はファイレクシアのグリストルや油によって汚染され、かつての輝きを失っていきます。ミラディン側の抵抗勢力は、それぞれの拠点や象徴的な場所(タングル、メムナークの城砦跡地、大霊廟など)で奮戦しましたが、物量と完成化による変容の脅威に晒され、徐々に追い詰められていきました(『ミラディン包囲戦』)。
特に、ファイレクシアはミラディン側の指導者層や強力な戦士を標的とし、彼らを完成化して自陣営に取り込むことで、抵抗勢力の弱体化を図りました。また、情報戦や内部崩壊を誘う策略も用い、ミラディン側の連携を阻害しました。
プレインズウォーカーたちもこの戦いに深く関与しました。エルズペスはミラディン側の希望として抵抗勢力を率いて戦い、カーンは自身の創造物がファイレクシアに乗っ取られようとしている現実に苦悩しました。しかし、ファイレクシアの力は想像以上に強力であり、抵抗勢力は絶望的な状況へと追いやられていきます。
戦争の終結と新ファイレクシアの誕生
ミラディン・ファイレクシア戦争は、最終的にファイレクシア側の完全な勝利に終わりました(『新たなるファイレクシア』)。ミラディン側の抵抗は打ち破られ、次元全体がファイレクシアの支配下に置かれました。多くのミラディン人が完成化されるか、あるいは虐殺され、次元の生態系は完全にファイレクシアのものへと作り変えられました。
この戦争の結果、鏡の次元ミラディンは消滅し、代わりに「新ファイレクシア」が誕生しました。新ファイレクシアは、旧ファイレクシアの脅威を凌駕するほど強大になり、後の多元宇宙全体を揺るがす機械兵団の進軍へと繋がることになります。この出来事は、MTGのストーリーにおいて、ファイレクシアの脅威が新たな段階に進んだことを明確に示すものでした。
その後の影響
ミラディン・ファイレクシア戦争の終結は、単に一つの次元が失われただけでなく、ファイレクシアという存在が多元宇宙にとって避けられない脅威であることを再認識させる出来事でした。この戦争で得た教訓は、その後のファイレクシアに対する戦いにおいて重要な意味を持つことになります。また、ミラディンから脱出した者たちや、後に次元を訪れた者たちによって、新ファイレクシアの脅威は多元宇宙に広く知られることとなりました。エルズペスやカーンといったプレインズウォーカーのその後の軌跡も、この戦争での経験によって大きく影響を受けています。完全にファイレクシア化されたと思われた次元にも、かすかな抵抗の火が残り続けているのか、あるいは完全に絶望に呑み込まれたのか、それはその後の物語で描かれていくことになります。