鏡の次元ミラディン:起源から新ファイレクシアへの変貌
鏡の次元ミラディン:起源から新ファイレクシアへの変貌
マジック:ザ・ギャザリングの多元宇宙には、数多の次元が存在しますが、その中でも特に異質で悲劇的な運命をたどったのが、鏡の次元ミラディンです。この次元は自然発生したものではなく、強力なプレインズウォーカーによって創造され、そして別の次元からの侵食によって、全く異なる恐るべき姿へと変貌しました。本稿では、ミラディンがどのように生まれ、いかにして新ファイレクシアと化したのか、その歴史を時系列で追っていきます。
ミラディンの創造:カーンの遺産
ミラディン次元は、大修復以前の強力なプレインズウォーカーであり、ファイレクシア戦争において重要な役割を担った銀のゴーレム、カーンによって創造されました。カーンは、過去のファイレクシア戦争で使用された「レガシー」と呼ばれるアーティファクト群を保管し、将来のファイレクシアの脅威に備えるための安全な場所として、この次元を設計しました。
カーンは、機械の神アーグス(ヤヴィマヤの根によって浄化されたアーティファクト・クリーチャー)を次元核として、無数の金属で構成されたこの次元を創り上げました。そこには、カーンが過去の旅で集めた様々な次元からの生命体の標本が持ち込まれ、繁殖と進化を遂げました。次元全体が金属で覆われているため、太陽も4つ存在し、それぞれが異なる種類の金属を反映する光を放っていました。
しかし、カーンがこの次元を離れる際、彼の中に残っていたファイレクシアの油の痕跡が次元核であるアーグスに付着してしまいます。これが、後にミラディン次元を蝕むことになる悲劇の始まりでした。カーンは自身の不調に気づき、自らを隔離するためにこの次元を離れますが、彼が残した「遺産」こそが、次元そのものに隠された時限爆弾となったのです。(関連セット:ミラディン)
メムナークの統治と隠された脅威
カーンがミラディンを離れた後、彼の創造物であり、次元核アーグスの守護者であったホムンクルス、メムナークが次元を統治するようになります。メムナークは、自身の精神を次元核と同期させることで全知全能に近い能力を得ましたが、その過程で核に付着していたファイレクシアの油の影響を受け、狂気に囚われていきます。
メムナークは次元の生命体を歪め、残虐な支配を行います。彼は自らを「ゴージョンの王」と称し、ミラディンに存在するクリーチャーから「魂の檻」と呼ばれるアーティファクトを用いて魂を抜き取るという非道な行為を繰り返しました。この時期、ミラディンには様々な独自の種族や文化が形成されていましたが、それらはメムナークの支配下で苦難を強いられます。次元核に潜むファイレクシアの油は着実に次元の奥深くへと浸透し、静かにその影響力を広げていきました。(関連セット:ダークスティール、フィフス・ドーン)
ミラディンの傷跡:ファイレクシアの再臨
メムナークの死後、次元核を支配する存在がいなくなったことで、次元核に潜伏していたファイレクシアの油が本格的に活性化します。油は瞬く間に次元全体に広がり、ミラディンの金属的な環境と融合しながら、生命体をファイレクシアの怪物へと変容させていきました。
この危機を察知したカーンはミラディンへ帰還しますが、彼自身もファイレクシアの油に深く侵されており、次元核の異常を食い止めることができませんでした。ミラディンは急速にファイレクシア化が進み、かつてその地に住んでいたミラディン人たちは、新たな侵略者であるファイレクシアとの過酷な生存競争に直面します。
この時期、エルズペス・ティレル、ケイヤ・アルセノフ、ジェイス・ベレレン、コタ・メン、ソリン・マルコフといった多くのプレインズウォーカーがミラディンを訪れ、ファイレクシアの脅威に立ち向かいました。彼らはミラディン人のレジスタンスを支援したり、ファイレクシアの核を調査したりしましたが、次元のファイレクシア化を完全に阻止することはできませんでした。(関連セット:ミラディンの傷跡、ミラディン包囲戦、新ファイレクシア)
新ファイレクシアの誕生と完全なる統一
ミラディンを舞台としたミラディン人とファイレクシアの戦いは、ファイレクシア側の勝利に終わります。次元の環境は完全にファイレクシアの有機機械構造へと変貌し、ミラディンは「新ファイレクシア」として生まれ変わりました。この新たなファイレクシアは、かつての旧ファイレクシアとは異なり、次元固有の金属環境を取り込み、五つの異なる思想を持つ派閥(白:清純の母エリシュ・ノーン、青:核の学府ジン=ギタクシアス、黒:囁くものシェオルドレッド、赤:炉の世話人ヴォリンクレックス、緑:囁く者アトラクサ)が支配する構造となりました。
新ファイレクシアの誕生は、多元宇宙全体にとってかつてない脅威となりました。特にエリシュ・ノーンは、全多元宇宙をファイレクシア化し、「完成化」させるという野望を抱き、次元を超えた侵攻計画を進めます。多くのミラディン人は絶滅するか、ファイレクシア化されるかという悲劇的な運命をたどり、一部のレジスタンスのみが細々と抵抗を続けました。
新ファイレクシアは内部で法務官たちの権力闘争を繰り広げながらも、次元の力を増大させていきました。そしてついに、彼らは多元宇宙への大規模な侵攻を開始し、「機械兵団の進軍」へと繋がることになります。(関連セット:ファイレクシア:完全なる統一)
結び:悲劇の次元の遺産
ミラディン次元の歴史は、創造者の意図とは裏腹に、最も恐るべき脅威であるファイレクシアに完全に支配されるという悲劇的な物語です。カーンによる希望を込めた創造から、メムナークの狂気、そしてファイレクシアの侵食を経て新ファイレクシアへと変貌したこの次元は、MTGのストーリーラインにおいて、ファイレクシアの脅威を象徴する存在となりました。
新ファイレクシアは「機械兵団の進軍」で敗北しましたが、その中心地である新ファイレクシア次元そのものがどうなったのか、そしてファイレクシアの脅威が完全に去ったのかは、今後の物語で明らかになるでしょう。ミラディンが再び元の姿を取り戻す日は来るのか、あるいは別の運命をたどるのか、その結末はまだ描かれていませんが、この次元の悲劇的な歴史は、多元宇宙の物語に深く刻まれています。