キオーラの軌跡:海の力の探求とその旅路
キオーラの軌跡:海の力の探求とその旅路
プレインズウォーカーであるキオーラは、故郷の次元ゼンディカーの海とそこに棲む巨大なクリーチャー、特にクラーケンやリバイアサンといった海の巨獣の力を深く愛し、その力を己のものとすることを追求する存在です。彼女の旅路は、自身の故郷を襲う危機への対処から始まり、より強力な海の力を求めて次元を渡り歩き、様々な出来事に関わってきました。この記事では、キオーラの主要な軌跡を追い、彼女が多元宇宙の物語にどのように関わってきたかを解説します。
ゼンディカーでの目覚めとエルドラージの脅威
キオーラは激動する次元、ゼンディカーの出身です。彼女のプレインズウォーカーの灯が灯った正確な時期や経緯は明確にされていませんが、古くからゼンディカーの海と荒々しい魔法に親しみ、巨大な海のクリーチャーたちを操る能力を持っていました。
彼女が物語上で初めて登場するのは、『ワールドウェイク』ブロック(2010年)の時期です。この頃、エルドラージがゼンディカーで本格的に覚醒し、次元全体が崩壊の危機に瀕していました。キオーラは故郷を救うため、エルドラージに対抗する手段として、より巨大で強力な海のクリーチャーを呼び覚ますことを目指していました。彼女は、ゼンディカーの原始的な海の力と繋がることで、伝説級のクラーケンやリバイアサンを呼び出すことができると信じていたのです。この目的のため、彼女は次元を渡り歩き、他の次元の海のクリーチャーや神話、魔法について学び始めました。
テーロス次元への漂着と神々との対立
ゼンディカーを一時離れたキオーラは、テーロス次元に漂着します。テーロスは、神々が物理的な実体を持って存在し、信仰が世界を形作る次元です。キオーラはテーロスの海に棲む巨大なクリーチャーたちに魅了されますが、それらが海の神タッサを含むテーロスの神々の支配下にあることを知ります。
自身の力への絶対的な自信と、神々の支配を快く思わないキオーラは、海の神タッサから神聖な両叉の槍「クローティスの召喚(Bident of Thassa)」を奪うことを企てます。この槍は、タッサが海のクリーチャーたちを従わせる力を持つアーティファクトでした。彼女の行動はテーロス次元の神々、特にタッサとの対立を引き起こし、エルズペス・ティレルを含む他のプレインズウォーカーとの衝突にも繋がります。最終的にキオーラはクローティスの召喚を手に入れ、テーロスを後にします。この時期の物語は、『テーロス』ブロック(2013-2014年)で描かれています。
ゼンディカーへの帰還とエルドラージとの戦い
クローティスの召喚を手に入れたキオーラは、増強された自身の力とアーティファクトを携えてゼンディカーへ帰還します。『バトル・フォー・ゼンディカー』ブロック(2015-2016年)の物語では、エルドラージの脅威はさらに増大しており、多くのプレインズウォーカーたちがゼンディカーを救うために集結していました。
キオーラは、エルドラージ・タイタンの一体であるウラモグに対抗するため、自身の海の力とクローティスの召喚を用いてゼンディカー最大のクラーケン、コージを呼び起こそうとします。彼女はゼンディカーを救うこと自体には賛同していましたが、ギデオン・ジュラやジェイス・ベレレンらが提唱するエルドラージの無力化や追放ではなく、あくまで自身の力でエルドラージを打ち破ることに固執しました。
しかし、最終的にコージを完全に制御することはできず、エルドラージを打倒したのは、ジェイス、ニッサ・レヴェイン、チャンドラ・ナラー、ギデオンら「ゲートウォッチ」のプレインズウォーカーたちによる共同の戦いでした。この出来事はキオーラに大きな屈辱を与え、彼女はゲートウォッチ、特にニッサに対して強い敵意を抱くようになります。彼女はエルドラージの撃退という共通の目的を達成した後も、ゲートウォッチとは距離を置きました。
イクサランでの新たな探求
ゼンディカーでの敗北を経て、キオーラは自身の力への自信を取り戻すべく、新たな力を求めてイクサラン次元へ向かいます。『イクサラン』ブロック(2017-2018年)の物語では、彼女はイクサランの海の勢力である銀エラ部族のマーフォークたちと交流します。
イクサランには、触れた者に永遠の命をもたらすという伝説の秘宝「太陽の黄金の胴衣(The Immortal Sun)」が存在しました。キオーラはこの秘宝が自身の海の力をさらに増大させる可能性を秘めていると考え、その探索に乗り出します。彼女は銀エラ部族の知識と協力を得て秘宝の手がかりを追いますが、ジェイスやヴラスカ、さらにはゲートウォッチのメンバーも秘宝を求めてイクサランに集結しており、再び彼らと道を交えることになります。特にジェイスとは、イクサランの洞窟で共に行動する場面もありましたが、最終的に秘宝を手に入れることはできませんでした。太陽の黄金の胴衣は、プレインズウォーカーの灯を一時的に抑制する力を持つことが判明し、キオーラを含む多くのプレインズウォーカーがその影響を受けます。
カルドハイム次元での復讐とクラーケン召喚
イクサランでの経験の後、キオーラはカルドハイム次元へと移動します。『カルドハイム』(2021年)の物語では、彼女は過去の屈辱を晴らすべく、ゼンディカーで自身が呼び出そうとしたコージを上回る巨大なクラーケンを召喚することを目的としていました。カルドハイムには、様々な神々や巨大な怪物たちが存在する豊かな次元であり、彼女はそこで新たな力を得ようと試みます。
キオーラはカルドハイムの海の領域、クロースクォーへと向かい、そこに棲む神話級のクラーケンを呼び起こそうと画策します。彼女の試みは次元に混乱をもたらし、カルドハイムの神々や他のプレインズウォーカーとの新たな衝突を引き起こします。この次元での出来事は、彼女のクラーケン使いとしての能力と、自身の目的のためには他者との協力を拒む孤高の姿勢を改めて示しました。
その後のキオーラ
カルドハイムでの出来事以降、キオーラが物語の前面に登場する機会は減っています。彼女のクラーケン召喚の試みが最終的にどうなったのか、そして彼女が次にどの次元へ向かったのかは、現在のところ明確に描かれていません。
キオーラの軌跡は、自身の内なる力と外部の巨大な存在(海の巨獣、神々、エルドラージ、秘宝)を結びつけ、制御しようとする飽くなき探求の物語と言えます。彼女の自己中心的とも取れる行動はしばしば他のプレインズウォーカーとの対立を生みましたが、故郷ゼンディカーへの愛着や、強大な力への純粋な憧れといった側面も持ち合わせています。彼女の物語は、MTGの多元宇宙における様々な勢力や思想のぶつかり合いを象徴する一例であり、今後の物語で彼女が再び重要な役割を果たすのか、注目が集まります。