プレインズウォーカー年代記

ジェイス・ベレレンとヴラスカの完成化:ファイレクシアによる変容とその後の軌跡

Tags: ジェイス・ベレレン, ヴラスカ, ファイレクシア, 完成化, 機械兵団の進軍, イクサラン:失われし洞窟, 多元宇宙解放

導入:イクサランの出会いから完成化の危機へ

精神魔法の使い手であるプレインズウォーカー、ジェイス・ベレレンと、ゴルゴン族のプレインズウォーカー、ヴラスカの関係性は、イクサラン次元での再会を機に大きく変化しました。記憶喪失となったジェイスがヴラスカと共同生活を送る中で芽生えた二人の関係は、イクサランからの脱出後も続き、物語における新たな焦点の一つとなりました。

しかし、彼らの穏やかな時間は長くは続きませんでした。ニューカペナ次元での活動を経て、ジェイスとヴラスカはプレインズウォーカーの灯を狙うファイレクシアの脅威に直面し、最終的にミラディン次元改め新ファイレクシアへと捕らえられてしまいます。彼らが捕らえられたことは、多元宇宙全体を巻き込むことになる「機械兵団の進軍」の序曲であり、二人の身に迫る「完成化」の危機は、多くのプレインズウォーカーに衝撃を与えました。この記事では、ジェイスとヴラスカがどのように完成化されたのか、そしてファイレクシアの尖兵となった彼らが「機械兵団の進軍」でどのような役割を果たし、その後の運命がどうなったのかを追います。

完成化の経緯と「完全なる統一」

ジェイスとヴラスカが新ファイレクシアに捕らえられた後、彼らはファイレクシアの精神を完全に受け入れる「完成化」の過程へと強制的に進められました。完成化は、肉体と精神をファイレクシアの金属と油によって変容させる恐るべきプロセスであり、これを施されたプレインズウォーカーはファイレクシアの教祖、エリシュ・ノーンの絶対的な支配下に置かれます。

多元宇宙の英雄たちが新ファイレクシアへの潜入作戦を決行した際(『ファイレクシア:完全なる統一』)、彼らは変わり果てたジェイスとヴラスカの姿を目撃することになります。特に、ジェイスは既に完全に完成化されており、エリシュ・ノーンの側近として立ちはだかりました。ヴラスカもまた完成化の途上または完了した状態であり、かつての仲間や恋人の前に敵として現れるという悲劇的な状況が生まれました。この出来事は、新ファイレクシアの脅威が単なる次元の征服に留まらず、プレインズウォーカーという次元を渡る存在にまで及んだことを多元宇宙に知らしめる象徴的な瞬間となりました。

機械兵団の進軍における役割

完成化されたジェイスとヴラスカは、「機械兵団の進軍」において、新ファイレクシアの多元宇宙侵攻の尖兵として利用されました。完成化されたプレインズウォーカーは、それぞれの固有能力とプレインズウォーク能力を保持したまま、ファイレクシアの目的のために動く存在です。

ジェイスは、その卓越した精神魔法の能力をファイレクシアの戦略に活用しました。特に、彼はかつてニコル・ボーラスから奪取した、「破滅の刻」におけるボーラスの計画に関する知識をファイレクシアに提供したとされています。この知識が、新ファイレクシアによる多元宇宙への同時多発的な侵攻計画に利用された可能性は高いです。また、彼はファイレクシアの教祖エリシュ・ノーンの護衛として、あるいは特定の重要地点の防衛者として、物語の主要な局面に関与しました。

ヴラスカもまた、その石化能力を侵攻の際に使用したと考えられます。彼女がどの次元の侵攻に具体的に関与したかの詳細は時期によって異なりますが、完成化された彼女がファイレクシアの軍勢の一部として敵対的な行動を取ったことは間違いありません。

多元宇宙解放とその後の運命

機械兵団の進軍が最高潮を迎える中、多元宇宙解放のための反撃が開始されました。物語のクライマックスでは、ファイレクシアの力の源である「ファイレクシアの核」の破壊が試みられます。この作戦において、完成化されていたジェイス・ベレレンは重要な役割を果たしました。ファイレクシアの核はウルザの力とファイレクシアの技術が融合したものであり、ジェイスはその内部構造を精神的に探ることで、破壊するための鍵を見つけ出すことに成功します。核の破壊によって、多元宇宙全体に及んでいたファイレクシアの影響は劇的に弱まり、多くの完成化された存在が停止または浄化されることになります。

ヴラスカについては、核の破壊とは異なる形で解放される道筋が描かれました。彼女はラヴニカ次元の侵攻に関与していた際に、かつての仲間であるアジャニ・ゴルガリによって発見されました。アジャニは自身も完成化の危機に瀕していましたが、ヴラスカに対して浄化の儀式を試みました。この儀式が成功した結果、ヴラスカはファイレクシアの油の影響から解放され、人間の姿に戻ることができました。ただし、その代償として体は石化に近い状態となり、意識も明確ではない状態となりました。

ジェイスもまた、ファイレクシアの核破壊の過程で、精神的な負荷と核の崩壊の影響により、記憶を失った状態で次元を放浪することになります。彼はイクサラン次元へと流れ着き、そこで再び新たな冒険の始まりを迎えることになります(『イクサラン:失われし洞窟』)。ヴラスカもまた、ジェイスがイクサランに流れ着いたのと同時期に、その次元の地下深くへと辿り着き、記憶や体の状態が不確かながらもジェイスと再会を果たしました。

結び:複雑な軌跡の先に

ジェイスとヴラスカの完成化は、新ファイレクシアの脅威がプレインズウォーカーにも容赦なく及ぶことを示し、多元宇宙解放戦線に大きな衝撃を与えました。彼らがファイレクシアの尖兵として行動した期間は短かったものの、その存在は物語に暗い影を落としました。

しかし、多元宇宙解放作戦の成功によって、二人はファイレクシアの支配から解放されました。その過程で失われた記憶や負った傷跡は、彼らの今後の軌跡に影響を与え続けるでしょう。イクサランでの再会は、二人の物語がこれで終わりではなく、新たな展開を迎えることを示唆しています。記憶を失い、肉体に変容を負った彼らが、かつての関係性をどのように再構築し、多元宇宙で今後どのような役割を担っていくのかは、今後のストーリーで明らかになっていくでしょう。ジェイスとヴラスカの物語は、ファイレクシアとの戦いが終わった後も、個人の再生と関係性の再構築というテーマを提示しながら続いています。