プレインズウォーカー年代記

エリシュ・ノーンの軌跡:新ファイレクシアの完成化と支配を担う法務官

Tags: エリシュ・ノーン, 新ファイレクシア, 法務官, 完成化, 機械兵団の進軍

新ファイレクシアの「統一」を司る法務官

エリシュ・ノーンは、新ファイレクシアの五人の法務官の一人であり、白の円環「正義の聖堂」を統べる存在です。彼女は新ファイレクシアにおける「統一」という概念を体現し、ファイレクシア化された有機生命体を、感情や個性を排した完璧な機械生命体へと変貌させる「完成化」を推し進める中心人物でした。その支配欲と冷酷さは、新ファイレクシアの多元宇宙に対する脅威を象徴しています。

ミラディンから新ファイレクシアへ:白の円環の確立

エリシュ・ノーンの明確な起源は、ミラディン次元がファイレクシアの侵攻を受け、新ファイレクシアへと変貌していく過程にあります。旧ファイレクシアの遺産を引き継いだ油がミラディンを侵食し、五つの円環が形成される中で、エリシュ・ノーンは白の円環を掌握しました。

白の円環、正義の聖堂は、他の円環を「未完成」とみなし、全ての生命体をファイレクシアの教義の下に「統一」することを究極目標としています。エリシュ・ノーンは、そのカリスマと徹底的な教義によって信奉者を増やし、新ファイレクシア内で最も強大な勢力の一つを築き上げました。彼女の支配は、強固な階層構造と、個人の自由を一切許さない全体主義的な性質を特徴とします。この時期の出来事は、『ミラディン包囲戦』や『新たなるファイレクシア』といったセットで描かれました。

法務官同士の関係と勢力争い

新ファイレクシアの法務官たちは、それぞれが異なるファイレクシアの理想を追求しており、エリシュ・ノーンは他の法務官、特にシェオルドレッド、ジン=ギタクシアスと激しく対立していました。彼女は自らの教義こそが真のファイレクシアであり、他の法務官の支配領域や手法を認めようとしませんでした。

例えば、黒の法務官シェオルドレッドが個人の権力と腐敗を追求するのに対し、エリシュ・ノーンは全体としての統一を重視しました。また、青の法務官ジン=ギタクシアスが冷徹な進化実験を行うことにも、エリシュ・ノーンは教義からの逸脱として反発していました。緑の法務官ヴォリンクレックスは肉体の強化を、赤の法務官ウルゴレク(後にタインに取って代わられる)は破壊と混沌を追求しましたが、エリシュ・ノーンの「統一」思想とは相容れない部分が多々ありました。

しかし、多元宇宙への侵攻という共通の目的においては、一時的に協力関係を築くこともありました。『ファイレクシア:完全なる統一』の物語では、エリシュ・ノーンが多元宇宙からの侵入者(プレインズウォーカーたち)を迎え撃つ中心となり、多くのプレインズウォーカーを完成化させることに成功しました。ジェイス・ベレレンやヴラスカ、アジャニ・ゴルガリ、月の賢者タミヨウといった著名なプレインズウォーカーたちが彼女の手によって完成化され、ファイレクシアの尖兵と化しました。

多元宇宙への侵攻と最期

エリシュ・ノーンの最大の野望は、新ファイレクシアの支配を多元宇宙全体に広げることでした。『機械兵団の進軍』では、彼女が次元を超えたファイレクシアの侵攻を指揮しました。オムニサピアントという巨大な機械構造体を利用し、新ファイレクシアの軍勢を様々な次元に送り込み、完成化を推し進めようとしました。

彼女は新ファイレクシアの中心部、大聖堂の玉座に座し、多元宇宙の征服という悲願の達成を目前にしていました。しかし、多元宇宙解放軍との最終決戦において、エリシュ・ノーンはエルズペス・ティレルとの一騎打ちに敗れました。エルズペスが希望の剣でエリシュ・ノーンを打ち倒したことにより、新ファイレクシアの統一された指揮系統は崩壊し、機械兵団の進軍は終焉を迎えることとなります。

物語における位置づけと影響

エリシュ・ノーンは、新ファイレクシアという勢力の顔として、『ミラディン包囲戦』から『機械兵団の進軍』に至るまでのストーリーにおいて極めて重要な役割を果たしました。彼女の存在は、ファイレクシアが単なる侵略者ではなく、独自の哲学と社会構造、そして恐るべき統一性を備えた存在であることを強く印象付けました。

彼女が推進した完成化は、多くの人気キャラクターの運命を狂わせ、読者に大きな衝撃を与えました。エリシュ・ノーンの敗北は、ファイレクシアの脅威が一時的に収束したことを意味しますが、新ファイレクシアの物語が完全に終わったわけではなく、その遺産や、他の次元に残されたファイレクシアの痕跡が今後のストーリーにどう影響していくのかは、引き続き注目されています。エリシュ・ノーンの軌跡は、新ファイレクシアという壮大な物語の中心線の一つであったと言えるでしょう。