ドミナリア連合とファイレクシア戦争：次元存亡をかけた戦いの軌跡
はじめに：次元の存亡をかけた大戦
マジック：ザ・ギャザリングの世界において、ファイレクシアは長きにわたり多元宇宙最大の脅威として描かれてきました。中でも、彼らの最初の標的であり、その侵攻を一身に受けた次元ドミナリアで繰り広げられた「ドミナリア連合とファイレクシア戦争」は、MTGの歴史上最も大規模かつ、多くの英雄やプレインズウォーカーが関与した壮絶な戦いの一つです。この戦争は、兄弟戦争の終結から数千年を経て、ファイレクシアがドミナリアへの本格的な侵攻を開始したことから始まり、その後の多元宇宙全体の物語に決定的な影響を与えました。この記事では、この大戦の背景、主要な出来事、関わった人物、そしてその終結が世界にもたらした変化について掘り下げます。
戦争の背景とレガシー計画
ファイレクシアの支配者であるヨーグモスは、太古よりその目をドミナリアに向けていました。兄弟戦争の終結後、プレインズウォーカーとなったウルザは、ファイレクシア、特にヨーグモスへの復讐と、再び次元を襲うであろう脅威への備えとして、数千年にわたる壮大な計画に着手します。これが、多元宇宙中に散らばる強力なアーティファクトや技術を結集し、ファイレクシアを打ち倒すための究極兵器、すなわち「レガシー」を創造する計画でした。
ウルザは多くの次元を旅し、様々な人物や勢力と協力、あるいは敵対しながらレガシー部品を集めました。この過程で、銀のゴーレム、カーンが創造され、また次元間を行き来できる船、ウェザーライト号とその設計者であるシッセイ、そして後の船長となるジェラード・キャパシェンといった重要なキャラクターたちが登場します。レガシー計画は極めて長期にわたるものでしたが、ファイレクシアもまた着実にドミナリアへの侵攻準備を進めていました。次元ラースを戦略的な拠点として拡張し、次元間ポータルである「転置門」を通じてドミナリアへの足がかりを築いたのです。
ファイレクシア侵攻とドミナリア連合の抵抗
ファイレクシアの本格的な侵攻は、次元ラースがドミナリアに重ね合わされる「次元転置」という現象によって始まりました（『ウェザーライト』ブロック、『メルカディアンマスクス』ブロック）。黒の法務官ヴォルラスに率いられたファイレクシア軍は、ドミナリア各地に壊滅的な被害をもたらしました。
これに対し、ドミナリアの様々な種族や国家は、共通の敵であるファイレクシアに対抗するため、「ドミナリア連合」を結成しました。連合軍は、ウェザーライト号とその乗組員、そしてウルザやカーンといったプレインズウォーカーたちの支援を受けながら、過酷な戦いを繰り広げます。この時期の主要な出来事としては、スキアーク峡谷での激戦、テフェリーがサマイトを次元から切り離した出来事、セレニア図書館の破壊、ケルドの侵攻とその撃退、ウルザのアカデミーの崩壊などが挙げられます。これらの戦いは、『インベイジョン』ブロックで詳細に描かれています。
ウェザーライト・サーガのクライマックス
ドミナリア連合とファイレクシア戦争は、「ウェザーライト・サーガ」として知られる一連の物語のクライマックスでもありました。ジェラードとウェザーライト号の乗組員たちは、失われたレガシー部品を探し求め、仲間を救出し、そして最終的にヨーグモスを打倒するための鍵となる役割を担いました。彼らの旅はラース次元にも及び、捕らえられたシッセイを救出したり、ヴォルラスと対決したりしました。
物語が進むにつれて、レガシーが集結し、ウェザーライト号自体がレガシーの中核であることが明らかになります。そして、最終決戦の舞台はドミナリア、特にその中心であるウルザのアカデミー跡地へと移ります。
最終決戦：ヨーグモスの降臨と追放
戦争の最も激しい局面は、『アポカリプス』で描かれました。ヨーグモスはついにドミナリアへとその存在を現し、次元全体に死の霧を撒き散らしました。ドミナリア連合は絶望的な状況に追い込まれますが、ここでレガシーが真価を発揮します。
ウルザは自身の灯とレガシーの中核であるカーン、そしてウェザーライト号を融合させることで、ヨーグモスに対抗する力を生み出そうとしました。最終的に、ウルザはヨーグモスとの相打ちに近い形でその命を終え、カーンはウルザの灯を受け継いでプレインズウォーカーとして覚醒します。カーンは、ウェザーライト号とレガシーの力を用いて、ドミナリアからヨーグモスを追放することに成功しました。
この戦いでは、ウルザとヨーグモスだけでなく、ドミナリア連合の多くの英雄たちが犠牲となりました。しかし、彼らの犠牲によって、ドミナリアはファイレクシアによる完全な「完成化」という最悪の事態を免れたのです。
戦争の影響とその後
ドミナリア連合とファイレクシア戦争は終結しましたが、その爪痕は深く残されました。ドミナリアは次元的な傷を負い、環境は荒廃し、時間的な不安定さが生じました。これは後の『時のらせん』ブロックで描かれる「次元のひび割れ」へと繋がり、多元宇宙全体に影響を及ぼす大いなる修復のきっかけとなります。
また、この戦争は多くのキャラクターの運命を決定づけました。ウルザは物語から退場し、カーンはプレインズウォーカーとして新たな旅を始めます。ウェザーライト号の乗組員たちも、それぞれの道を進むことになります。ファイレクシアはドミナリアから一時的に退けられましたが、その脅威が完全に消滅したわけではなく、後の「新ファイレクシア」の誕生へと繋がっていきます。
結び：歴史に刻まれた次元防衛戦
ドミナリア連合とファイレクシア戦争は、単なる次元間の紛争ではなく、MTG世界の根幹に関わる壮大な物語でした。ウルザの千年におよぶ計画、多くの英雄たちの奮闘、そしてプレインズウォーカーたちの決断が交錯し、次元の、そして多元宇宙の命運が賭けられた戦いです。
この出来事は、ファイレクシアという脅威の執拗さ、そしてそれに立ち向かう者たちの勇気と犠牲を鮮烈に描いています。また、後の「大いなる修復」によるプレインズウォーカーの性質の変化や、ファイレクシアの再来といった出来事へと繋がる重要な転換点でもありました。ドミナリア連合とファイレクシア戦争の軌跡を追うことは、MTGの複雑なストーリーを理解する上で、不可欠な要素と言えるでしょう。